卒業生のご紹介
代表 宮村 柚衣 様
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住所
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東京都墨田区亀沢4-21-3 KSビル3階Co-lab アトリエ2
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事業内容
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小規模保育所の運営
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創業
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平成26年10月
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ホームページ
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愛情たっぷりに育てたいという想い
- ひがしん
はじめに、御社の事業概要をお教えください。
- 宮村さん
保育園を経営しています。平成27年4月から認可保育園となり、墨田区の小規模保育園として、現在は0歳から2歳までの19人のお子さまをお預かりしています。
創業時は無認可保育園としてスタートしましたので、0歳から小学校に上がるまでの幅広い年齢のお子さまを25名までお預かりしていました。
- ひがしん
保育園の名称「ちゃのま保育園」には“こだわり”があるとお聞きました。そのネーミングの由来やコンセプトをお聞かせください。
- 宮村さん
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私は、奈良県の明日香村という田舎で育ちました。大家族で親戚も多く、周りも友達が多くてひっきりなしに人が来る家でした。自分がそんな環境で育ってきたので、この保育園も実家の茶の間みたいな感じで安心してみんなが来て、お母さん達がちょっと座っておしゃべりして、愛情たっぷりに育てるような場所にしたいと思い「ちゃのま保育園」と名付けました。
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- ひがしん
「お茶の間」ということですね。
- 宮村さん
そうです。「お茶の間」です。
自分の家の延長というか、私の家がもっと広かったら、その家の茶の間で自分の子ども以外も預かりたいと思ったんです。
- ひがしん
オープンしてすぐに定員になったと伺いました。
- 宮村さん
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オープン2週間で定員いっぱいになりました。
お母さん方がちゃのま保育園を選んでくれた1番の理由は『自園調理』でした。「ここはあったかいご飯なんですね」と、涙をながすお母さんもいたほどです。無認可保育園で自園調理の給食というのは、すごく珍しかったんです。
他の保育園からこの保育園に替えられる方もいました。「何が違うんだろう」と思ったら、前の保育園は、油もの、揚げものばかりの仕出し弁当で、離乳食は対応していませんという保育園だったそうです。だからこちらを選んでくれたというんです。
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自分の子ども2人を預けるために作りました
- ひがしん
自園調理はコストがかかるんではないでしょうか。
- 宮村さん
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園内に厨房を作って、調理士さんも入れて、コストも手間も掛かります。
特に無認可保育園の時の収支は本当に厳しかったんですが、それでも、私は自分の子ども2人を保育園で愛情たっぷりに育てるためにこの保育園を作りましたから、自園調理にはこだわりました。
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- ひがしん
創業するきっかけは、ご自身のお子さまのためでもあったんですね。
- 宮村さん
そうなんです。2人目が生まれて自分の子どもを保育園に入れようとした時、どこの保育園にも入れなくて困ってしまったんです。私の子供たちは年子だったので、さすがに2人連れて働きにはどこにも行けないという状況でした。
どこの保育園も空きが無い。その時は行政に腹が立っていました。「なんで保育園がないの。税金も払ってるのに」となったんですが、今度はその腹を立てている自分にだんだん腹が立ってきて、行政がやればいいのにと思うけれど、それは他力本願だと思ったんです。
それで、「自分が困ってるんだったら、自分で動くしかない」と思い立ち、「保育園を作ろう!これだけ私が困ってるのだから、他にも困っている人も居るだろう、頑張ってみよう!」となったわけです。
今までの経験が役に立った
- ひがしん
今まで、保育園で働いたり経営に関わったりなどの経験はあったのでしょうか。
- 宮村さん
ないんです。ただ、妊娠して辞めるまで、前職は債務整理を専門に扱う事務所に勤めていました。そこでは、マネジメントも給料計算もプロモーションも全部ひっくるめて、経理と人事・法律事務まで全部やらせていただきました。そこでの経験は本当に役に立ちました。女性が7人から8人はいた職場で、全く今と一緒だったのも良かったのかもしれません。
- ひがしん
保育園をやろうと思ったとき、まずどういった事から始められたのですか。
- 宮村さん
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まず始めに保育園について知ることから始めました。
認可保育園と認証保育園の違いも解らなかったので苦労しましたが、調べていくうちに良い保育園と悪い保育園というのが解ってきました。その後は、その見つけた良い保育園について徹底的に調べました。そうすると無認可保育園の場合とか、行政の補助についてとか、小規模保育園は行政の補助がないと経営が回らないとか、いずれ認可を取るためにどうすれば良いのかなど、大体の問題点が浮上してくるので、次はその問題点を潰すことに注力しました。
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- ひがしん
ご自身で全部調べてやろうというのはすごい行動力です。
- 宮村さん
以前勤めていた事務所の立ち上げを経験したことが幸いしました。
私は行政書士の資格も持っています。司法書士事務所にいたので法務事務もできます。認可書類も書けることが強みでした。今までの経験が役に立ちました。
- ひがしん
創業を決心してから、実際に創業するまでにかかった期間はどれくらいでしたか。
- 宮村さん
半年でした。よく「早い」と言われます。でも、それは向き不向きだと思います。
私は短期で集中して何かをすることが得意なので、反対に1年かけてじっくり準備して・・・ということをしていたら開園していなかったかもしれません。私は短期間での準備のほうが楽でした。
自分で何かやった方がいい
- ひがしん
その半年の間にどのようなご苦労がありましたか。
- 宮村さん
例えば、物件を探すのに子どもを連れて行っていました。1歳の子はベビーカーに乗せて、1つ上のお姉ちゃんは歩かせて、墨田区中を歩きました。
それで不動産屋さんに入ったら相手にされないんです。即答で「保育園の物件探してるんですけど」、「はぁ?」みたいな感じでした。そらそうですよね、どっからどうみても子連れ主婦が保育園をつくるような物件の敷金礼金を払えるとは思いません。また、下の子が寝てくれていた時はいいんですが、起きている時はベビーカーに乗って騒ぐので、不動産屋さんで全然話しができない。
だんだん慣れてきて、「保育園物件ありますか」と聞いたら、座ったりせず資料を持ち帰って、家でチェックするというふうにしていました。
- ひがしん
一番手のかかる時期の1歳、2歳の子どもを連れながら、全部準備するのは本当に大変な事だったんだと思います。
それでも、無事に保育園をオープンし、そこでご自分のお子さんを預けられる環境というのはとてもいいですね。
- 宮村さん
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本当に良かったです。今、お姉ちゃんは違う保育園に通っているんですが、全く何をやってるか分からないんです。立ち上げの大変な時期に安心出来る環境の中で仕事をしながら子育て出来たことは貴重な経験です。また、ちゃのま保育園のコンセプトに共感してくれた信頼できるベテラン保育士さん達に毎日愛情たっぷりに育ててもらっている姿を見れたのは幸せです。
下の子は発達障害に該当するかもしれません。しかし、ここでは子ども一人ひとりに向き合い、みんなが手を掛けてくれ手厚い保育を実現してくれているので不安がありません。人数が多く目が届かない保育園に通っていたら、不安でたまらなかったと思います。
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- ひがしん
近くで我が子の成長を見られるというのは、いいものですね。
- 宮村さん
はい。子どもがすごく楽しそうで、毎朝、保育園に行きたくて泣いちゃうくらいです。
この保育園の特徴は、本当の「茶の間」みたいに人と人との距離が近いことです。また、園児19人に対し保育士の人数は8人という手厚い保育を実現しています。茶の間で親戚の子どもの面倒をみるように、園児3人に対し保育士1人が対応します。そんな、手厚い保育が一番の特徴です。
創業塾を受講して
- ひがしん
ところで、当金庫の「ひがしん創業塾」を受講されてみていかがでしたか。
- 宮村さん
本当に役に立ちました。
講師の方が『投資をしないといけない』と話していました。
無認可保育園だった時代、赤字だったんですが、将来への投資と考え保育士の人数を手厚くしました。
また、『簡単に価格は下げるな』とも話されていましたことに感銘を受け、保育料を値上げしました。月謝を少なくすればコストを抑える経営となり、結果、保育の質が落ちることになります。「ひがしん創業塾」を受け、この保育園を長く経営することがお母さんのためであるということを教えていただきました。
- ひがしん
「ひがしん創業塾」を卒業された方々と、その後もつながっていると伺いました。
- 宮村さん
先日、「ひがしん創業塾」の卒業生や私が参加してない墨田区創業塾の卒業生など、創業塾卒業生の方々と集まって、ポットラックパーティー(※)を開催しました。すごく楽しかったです。ちょっとした悩みや近況報告など同じ創業という経験をした仲間同士で話し合うだけで気が楽になりました。
※メンバーそれぞれが食べ物を持ち寄って参加する気軽なパーティ。
- ひがしん
皆さん、全く業種は違えど、同じ創業者というところで、分かり合えるところがあるわけですね。
- 宮村さん
はい、連帯感がありとても楽しい創業塾でした。「ひがしん創業塾」は参加者も意見をバンバン言うので、講師の方が『とってもアットホームな起業塾ですね。』と、おっしゃるくらい仲が良かったです。創業塾といったら、寝るのをこらえる感じなのかなと思っていたんですが、ワークショップがあったり、交流があったりと楽しいじかんでした。また、事業計画書の作成についても丁寧に指導してくれたり良かったです。
創業を目指されている方へ
- ひがしん
ありがとうございます。
今後の展望についてもお聞かせください。
- 宮村さん
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私の今後の展望としては、起業経験と行政書士の資格を活かして創業支援をやっていきたいと考えています。
知らない方から「お話聞かせてください」と連絡をもらうことが多くなりました。
私が創業する時には近くに実際に保育園をつくった人がいなかったので聞けませんでしたが、もし、今の私のような人がいて色々聞けたら、ここを改善できたのにというところがいくつもあります。また、働きたいお母さんを応援し子育てしながら仕事するのも楽しいよ!ということを伝えていきたいです。
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- ひがしん
最後に創業を目指されている方にメッセージをお願いします。
- 宮村さん
今は女性の活躍が推進されていますが、バリバリ働くのではなく『無理せず働くこと』が一番だと思います。無理せずできることからやってみたり、やってみたいことを我慢せずにちょっとだけやってみたりする。そんな風に無理せず柔軟な働き方を身につけることが本当の女性の活躍だと私は思います。
- ひがしん
本日は、お忙しいところありがとうございました。
インタビューを終えて
第1期の「ひがしん創業塾」にご参加頂いた宮村さま、明るいお人柄でムードメーカーとして講義も盛上げていただきました。今年4月に認可保育園になられたということで、今回、近況をお伺いしつつ、創業を志したきっかけなど創業をテーマにインタビューさせて頂きました。
1歳と2歳のお子さまの子育てをしながら、保育園の立上げを一から全てご自身でやられた行動力には驚きました。
創業を目指している方へのメッセージ「無理せず働くこと」。これはご自身のご経験からですが、会社名にも同じ想いが込められているのかもしれません。「合同会社はひぷぺぽ」は、はんぶんでいい・ひとなみでいい・ふつうでいい・へいぼんでいい・ほどほどでいいの頭文字と、普通に平凡に程々頑張ってる自分に○をあげたものだそうです。
今回、大変貴重なお話をいろいろとお聞きできました。ひがしんも宮村さまのこれからのご活躍を応援していきたいと思います。
(インタビュー時期:2015年8月)